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HUMAN
2021.11.11

すでに暮らしの一部 #go_fishing

プロサーファー大橋海人の日常に触れるインタビュー

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国内外問わずメディアに取り上げられるカリスマプロサーファー大橋海人さんにとって海は遊び場であり生活の舞台。今回はあまり語られることのない、フィッシングライフにフォーカス。日頃「どんな風に釣りを楽しんでいるのか」を探ります。

フリーサーファーという立ち位置から表現の場を広げる

大橋海人さんは、業界ではその名を知らぬ者はいないプロサーファー。若干17歳でJPSAでプロの世界に入り、これまでに国内はもちろん海外の大会でも華々しい成績を残してきた。29歳となった今はコンペとは距離を置き、フリーサーフィンの世界に生きながらプロサーファーを続けているという稀有な存在でもある。

一般的にプロサーファーと呼ばれる人たちは、大会に出場して賞金を得たり、企業やブランドにスポンサードを受けて大会で活躍をして、そのPRをする役割を担うが、大橋さんはコンペという型から抜け出してフリーサーフィンに転向。サーフビデオやシーンを作ることを中心として、いわば“海のストリート”を生きながら、プロサーファーとしての活動を行なっている。

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photo by Kenta Kawana

「スポーツとしての横乗りも見直されていて、さらに盛り上がって欲しいと思う反面、その競技性ばかりが前に出ちゃうのはどうかなぁと危惧しています。アスリートらしくなるのも悪いことではないんですけど、サーフィン、スノーボード、スケートボードはライフスタイルが出るもの。だからコンテストだけがその魅力ではないと子どもの頃から思っていて。当然、僕はコンペをやってきたおかげで今のポジションがあるのですが、これからは僕の持ち味を生かしてサーフィンの面白さを伝えたり、僕たちや更に若い世代がシーンを作っていかなきゃと感じているんです。だから動画を作ったりして、その世界観を見せていければと」

オリンピック競技に加わり、スポーツとしての注目度も全世界的に上がっているサーフィンだが、そのビッグウェーブの中にあってもそれは“サーフカルチャー”というものとセットで語られるべきだというのが彼の意見だ。

サーフィンの良さを知ってもらう活動

大橋さんは1人のライダーから業界を動かして行くプレイヤーになるべく、様々なプロジェクトに参画。2021年からは、日本に上陸を果たしたブランド〈FORMER〉の一員として仕事をこなしながらも、フリーサーファーとして精力的に活動を続けている。

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「〈FORMER〉は世界的に有名な4人のプロサーファーが始めたアパレルブランドで、今年日本支社を設立。僕はそこのライダーでありながらマーケティングの仕事もしています。会社は恵比寿にあるんですが、僕は毎日出勤しなくてもOKという特殊な働き方をしてるんです。波がないときは会社に行って。波があるときは海に行ってという風に。もちろん打ち合わせや展示会などの場面はいなければいけないですが、自分は海や外に出ることで会社に貢献できることの方が多いので。

サーフィンをして、ショップとかにも顔を出したり、人と繋がって、サーフィンの良さを知ってもらう活動をするのが、業務の一環にもなっているんです。それに、僕主催のサーフィン大会の企画や、YouTubeにムービーをあげることも大切なライフワークにしているので、会社にはその活動を続けることを理解してもらった上で付き合ってもらっているんですよ」

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大橋海人と海。

生粋の茅ヶ崎生まれ、茅ヶ崎育ち。大橋さんは幼い頃から海に遊びに連れて行かれたそうで、彼が初めてサーフィンをしたのも物心がつく前だったという。

「記憶は当然ないんですが、3歳の頃に両腕に浮き輪をつけて、父親のロングボードの前に乗せられている写真が残ってるんですよね。自分的には、気づいたら海にいたけど、なんで俺ってサーフィンしてるんだろうな? って状態で。よく『大橋海人にとってサーフィンとは?』といった質問を投げかけられるんですけど、その時には『歩くことと同じぐらい自然なこと』って答えています。みんな誰しも立って歩き始めたのって覚えてないし、歩くっていうことは当たり前のことじゃないですか。僕にとってサーフィンも同じ感覚なんです」

そんな特異な価値観の土台となっているのは、彼を海に連れ出した張本人、プロサーファーでシェーパーでもあった父親の存在も大きいのだろう。大橋さんは小さい頃から海に揉まれ、湘南のサーフカルチャーにどっぷり浸かって育った。

「うちの親父は僕にサーフィンだけでなく釣りも教えてくれて、波がないときはよく釣りに連れ出されました。ただその時はルアーフィッシングではなくエサ釣りで。ずっと待っていなければいけないし、それなのに釣れないし、子どもの僕はすっごい退屈で、全く釣りの良さに気が付けていませんでしたね」

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「釣りを自分から積極的にやり始めたのは20代になってから。やっぱりサーフィンでも釣りでもサッカーでも、楽しんで打ち込むためには友達の存在って重要ですよね。インドネシアにサーフィンの海外遠征をしていた時に友達と釣りをしたのが特に思い出深く、それがキッカケですっかり釣りにハマっちゃいました。今では5、6人の仲間と期間を決めて、スズキ、ヒラメ、マゴチの3種でサイズを競っていて、優勝した人はみんなから好きな道具を買ってもらえるっていうレースをしながら楽しんでます」

気の合う仲間とサーフ&フィッシングの日々。

彼の地元での移動手段はファットタイヤを履いた電動自転車。彼と海の間に防砂林などの隔たりはなく、その眼差しの先には常に青々とした海が広がっているのだ。

「クルマで海に行ってもいいですが、湘南では渋滞は社会問題ですし、それに駐車場が高いので大変です。その点、自転車は渋滞もないし駐車場代も気にしなくて良いから最高ですよ。去年電動自転車を買って以来、サーフィンも釣りも移動はもっぱらこれで、サーフィンは波を見て、釣りならナブラ(海面近くに浮上した魚の群れ)が立ってないかを見ながらサイクリングロードを流します」

また、時にはSUPもアクティビティ兼足代わりに。馴染みのレンタルショップでボードを借りては、海の上を散歩感覚でぶらついているそうだ。

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「SUPはサーフィンと散歩、釣りを組み合わせた感じで楽しんでます。だいたいSUPをする時は友達と一緒が多いんですが、のんびりパドリングしがてら、糸垂らしておいてトローリングをするんですよ。食ってくれたらラッキーぐらいの感じで。だいたい烏帽子まで漕いで、上陸してちょっと遊んで、また帰ってくるのがお決まりのパターン。途中にナブラが立ってたらそれを追ってルアーを投げて。サメを避けながらゆるくやっています」

SUPやサーフボードをキャリアに乗せて自転車で引っ張る。こんな景色も茅ヶ崎では日常の景色。朝夕問わず、海に魅せられた者たちが街を行き交っている。

「僕は釣りの時は割とぼーっと頭を空っぽにしてて、サーフィンとは違うリラックス感を味わっています。波に乗る時と違う視点で海と関われますし、何より魚という相手がいて、彼らとのファイトが醍醐味ですね。あとは単純に原動力は魚が好きで食べたいってことなのかも知れません(笑)。行為自体が楽しめるし、魚が釣れたら持って帰ってアラまで余すことなく家族で美味しく頂く。よく考えたらこれって最高の遊びですよね」

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そんな言葉からも釣りはサーフィンと同じで彼の暮らしの一部になっていることが伺える。また、身構えず気楽に釣りに取り組んでいる姿勢は、フリーサーフに傾倒する彼の思想と通じるものがあるように感じる。

今日はサーフィンか、仕事か、釣りか。大橋さんは今日も大海原と対峙し、波を見つめていることだろう。

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大橋海人
1992年生まれ。2012年JPSAプロに昇格。湘南・茅ヶ崎を拠点とし、2009年にJPSA公認プロ昇格と共に『ルーキーオブサイヤー』に輝いてから、2013年に24年ぶりに開催した伝説のビックウェーブコンテスト『稲村クラシック』で優勝、2015年にWSL日本チャンピオン、2016年にはWSL QS10,000という世界最高峰のコンテストのワイルドカードを獲得。
@kaitoohashi

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